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2013-12-07 (Sat)
無配本で出そうと思ってた小説が発掘されたので、ちょっと手直しして置いておきます。
「10分休みしばりの学パロ」というお題の一環として書いたんですが、
音源の規約の関係で個人誌に入れられなかった小話。
結局表紙が書けなかった&面付け失敗したので無配本としても出せませんでしたが^q^

見た目からコンビ扱いされている釣歌音ソウと終音オワタの赤パーカー組、
一見賑やかで明るいオワタが超ネガティブで、
内向的で大人しそうなソウが図太い真逆コンビだったら楽しいなと思って書きました。
オワタが比較的残念な感じになってしまったので、オワタファンの方本当すみませんorz

・釣歌音とマコがクラスメイト
・はくぽがバスケ部エース
・黒城レキはサッカー部ではくぽのまぶだち
あたりの設定は、学園系UTAU式で出した小説「どき!男だらけのドッヂ大会」にも出しているので、
お持ちの方はぜひ読み返していただけると。
「小説読み飛ばしてたわ!」って方はぜひ読んでみてくださいw
(完売してから結構経つので、ネットに再録しようかな~とも考えているんですが。
データ残ってたかな……もし見たい方いたら探してみるので言ってください。)

【登場音源】
釣歌音ソウ、和音マコ、終音オワタ、月代はくぽ、黒城レキ

本編は続きからどうぞ↓
隣のジグソー


 今機嫌がよさそうだとか、機嫌が悪そうだから放っておこうとか、震えてるから傍にいてやろうとか、ヤバイ雰囲気なので笑って立ち去ろうとか。
 俺にはそんなもの判断できないし、分かる努力も向かないようなので、人間関係など広めるもんではない――というのが俺の持論だった。
 だがら中庭のハーフコート、休み時間なのに先輩の突発バスケに付き合っているあいつを見て、俺は「懲りずにまぁ」とつぶやいたのだ。



「何か言った? 釣歌音くん」
 外の喧騒に紛れさせてしまうつもりだったそれに、澄んだ声が返ってくる。俺はハッと顔を上げて「いやぁ」とあいまいなうめきを漏らした。
 これが仲のいい女子であれば、会話が弾むきっかけにでもなっただろう。しかしあいにく、俺と和音さんはただのクラスメイト。しっかり者でクラス中から慕われる和音さんと、隅の方で本ばかり読んでいる俺では、接点とかもほとんどない。
 共通点と言えば、お互い頼まれごとが多いことくらいで。それも、和音さんは頼りにされているからで、俺は押し付けられやすいから、という絡繰りでしかなかった。
 休み時間に社会科準備室で二人きりになっているのも、そういうこと。教師に教材を戻しに行くよう頼まれたからという、お決まりのパターンの一環だった。
「別に……元気だなと思って」
 特にごまかすようなことでもないので、そう言い直す。俺が窓に身を寄せると、彼女も言葉の矛先を察したみたいで、くすっと微笑んだ。
「そうね」
 そこは中庭が見下ろせる特等席だった。常の十分休みでは、渡り廊下代わりに横切る生徒をちらほら見かける程度なのだが、今日に限ってはにぎやかな声に占拠されていた。
 小さなハーフコートで行われる、即興のスリーオンスリー。彼らはさして大きくない四角い線の中を、制服のままバッタのように飛び跳ねている。たった十分の休み時間では着替える暇もなかったのだろう。
「あれは確か隣のクラスの」
「そう、終音オワタ」
 オワタは賑やかで目立つやつだから、クラスが違っても知っている生徒は多い。もちろん俺とは全然違うタイプの人間だが、中学でクラスが三年間同じになってしまったのと、高校の委員会が被ったせいで、今でも話す機会のあるオトモダチだ。
 和音さんはすぐに作業に戻ってしまったが、俺は手元の資料をそろえるふりをしながら、こっそりその即興試合を盗み見た。

 日に透けると金に近くなる茶髪を振り乱しながら、オワタは険しい顔でコートを駆け回る。身を深く沈めたかと思うと一瞬のうちに加速し、目の前にいた人影の横をするりと抜けていく。
 パスの法則性から見るに、たぶん手首にバンダナを巻いている三人が敵チーム、それ以外の二人が味方チームだ。
「オワター、いけぇ!」
 味方の叫びが、換気用に開けた窓の隙間から飛び込んでくる。叫んでいるのは確かサッカー部の黒城先輩だ。休み時間に入ってすぐ、その場にいたメンバーをかき集めたのだろうと想像できる雑多な顔ぶれだ。
 バスケ部のオワタには有利な勝負に思われたが、狭いコートの中、自慢の俊足が活かしきれずに苦戦しているようだった。一人抜いたのもつかの間、すぐに別のディフェンスが眼前に立ちはだかる。
 ゴールまでは中途半端な位置取り。抜けるのもシュートを決めるのも得策でないと判断してか、オワタはボールを横へと流す。
 向けられたボールに黒城先輩が反応し、すぐに手をかまえるが。
「もーらいっ」
 さっと出てきた黒髪の少年に、オワタがうめく。
「月代先輩……ッ」
 伸びてきた手がパスをカットし、ボールは相手チームの手中へ。月代先輩は短くドリブルを繰り返し、あっという間にゴールとの距離を詰めた。
 ただし、短距離での瞬発力ならオワタも負けていない。はじけるように動いた身体は、月代先輩がフォームをシュートの形に切り替えるよりも早く、目の前にたどりついていた。
 オワタはボールの進路をさえぎるようにして手を伸ばし――足元の溝に足を取られたか――上半身が斜めによろめいた。それにつられるように、月代先輩が一歩後ずさる。
 指の力が緩み、手のひらからボールが浮き上がる。一瞬の隙を見逃さなかった黒城先輩が、すかさずそのボールをはじいた。
 無造作に地面をバウンドするボール。それをオワタが手にし、身体の向きを捻じ曲げてゴールへ放つ。
 綺麗なシュートとは言えなかったが、ゴールの真下ではそれでも十分だった。
「よっしゃ!」
 得点を確信したもう一人のチームメイトが、一足先にガッツポーズを作った。月代先輩は数歩踏み出すが、今から手を伸ばしてももう間に合わない。ボールはゴールの真上にさしかかっていた。
 それでも動きを止めずに、月代先輩は軽くひざを曲げてボールを見据える。
 浅い踏み込みで地面を蹴る。しかし十分に高いジャンプ。その指先はゴールの上へと伸び、ボールの底に触れた。
 軌道の甘かったボールは簡単に枠をはずれ、ゴールの外側へと落ちていった。
 一瞬の逆転劇に反応できたのは月代先輩のチームの方で、ボールはゴール下にかまえていた一人がかっさらった。一度だけドリブルをしてからリズムを整え、綺麗なシュートを決める。
 それを止める者は今度こそ誰もおらず、ネットが揺れ、ボールがリングの中をくぐっていった。

「逆転勝利ー!」
 ボールが石畳に転がる音と、月代先輩の声が、試合終了の合図となった。月代先輩が得意げな笑みを向けると、オワタはずれかかった赤い眼鏡を押し上げる。
 ごにょごにょとこぼれたオワタの声は、小さすぎて二階までは届いてこなかった。短かったのでたぶん軽い悪態でもついたのだろう。
 月代先輩はそれを笑い飛ばしながら「一年の割にはよくやったよ!」と機嫌よくオワタの頭をつかまえてなで回す。オワタの跳ねた髪が余計にぼさぼさになった。
「リベンジにもう一試合やる?」
「次の授業始まるだろ阿呆」
「一試合だけ! な!」
 興奮冷めやらぬ声が校舎の中にまで響いてくる。月代先輩はねだるように黒城先輩のシャツを引くが、黒城先輩はチョップでそれに応えた。
 俺は、月代先輩の腕にくるまれたまま固まっているオワタをじっと眺め……石像のように微動だにしないので、ため息を一つ。
 どうせ頭の中で色んなことをぐっちゃぐちゃに考えているんだろう。あいつは無神経のようでいて意外と気にしいなのだ。
 自分がぶつかったせいで先輩がボールを落としたとかそういうことを顔に出さない人だから心の奥では怒ってるんじゃないかとか周りの皆も空気読めと思ってるんじゃないかとか。
 果ては一年のくせに即興試合に混ぜてもらって申し訳ないとか、どうでもいいところにまで思考がスピンオフするのがお決まりのコース。そういった類の愚痴を聞かされるのは俺の役目だから。
 へこむくらいなら人間関係などすっぱりやめてしまえばいいのに。それを口にしたら口論が泥沼化したことがあるので、二度と言わないけれど。
『俺が色んなやつに話しかけるタイプじゃなかったら、お前と友達になれなかったかもしれないじゃないか』
 酷い顔で泣きながらそう言われてしまえば、俺にそれ以上の反論ができるはずもなかった。
 気は進まないが、俺の平穏な放課後のためだ。俺は手の中の教材を机の端に追いやり、社会科準備室の窓を全開にする。
 軽く身を乗り出して、俺は精一杯の大声を中庭に落とした。
「オワタ! 急げよ、あと二分で鐘が鳴るぞ!」
 慣れない仕事に、言葉を切ったあと眉間にしわを寄せて唾液を飲み込む。
 渾身の大声は無事届いたらしく、オワタは慌てて顔を上げた。上手く声が出なかったのか大きく頷き返してくる。
 月代先輩は「ええ~」と漏らしたものの、もう一度髪の毛をくしゃくしゃにしてからオワタを解放してくれた。そして転がったボールを潔くかごの中にシュートする。
 月代先輩が背を向けた隙に、オワタがこっそりこちらを仰ぎ見た。その顔が予想通り不安に占領されていたので、俺は軽く手を挙げ、「早くしろ」とジェスチャーを送る。
 オワタはぎこちなく視線を下ろし、月代先輩の背中に口を開く。
「――あのっ」
 月代先輩の投げたボールは、中のボールに軽くバウンドしてからかごの奥へ落ちていった。それを見守ってから月代先輩は振り返る。
「さ、さっき、ぶつか、りそうに……」
「なんだそんなん、気にするなって!」
 どもりまくってて笑いそうになるオワタの言葉に、月代先輩はさらりと答えた。にっと浮かべる人懐こい笑みに、偽りの色はない。
 オワタは頭の中で色んな言い訳を考えていただろうが、そんなものはその一言で吹っ飛んでしまったに違いない。口を開いたままの間抜けな顔で、呆然と瞬きを繰り返す。
「それにボールぶんどったのは黒城なんだからさー」
「あのくらいサッカーでも普通だぞ」
「そゆことー!」
 月代先輩はオワタの背中をばしんと叩いて、その衝撃でようやくオワタの顔がほっと緩みはじめる。まるで壊れたテレビのように見えて、俺は小さく吹き出した。



 オワタは月代先輩に深いおじぎを残し、校庭側――下駄箱のある方へと走っていった。俺も月代先輩に軽く頭を下げてから、窓を完全に閉めて鍵をかける。
 月代先輩はこちらに笑顔を返し、オワタが走り去った方向に大きく手を振った。
 俺も急いで社会科準備室を出て、先に出ていた和音さんが部屋の電気を消す。木の扉がガタガタと閉まる音に混じって、和音さんが「いいコンビね」とつぶやいた。
「俺とオワタ?」
 茶髪に眼鏡、赤いパーカー。見た目が似ているためセットみたいだということはたびたび言われていたので、俺はさらっと返した。
「見た目だけね」
「そうじゃなくて」
 廊下を早歩きで進みながら、いつもと違う反応が返ってきたので、俺の足取りがやや遅くなった。授業を控えた廊下は人気がなく、教室の前を通ると中から最後の賑やかさが漏れてきていた。
「お互いの空気をつかんでいて、補い合っている感じ」
 和音さんは歩調を落とすことなく進む。身長的に考えて歩幅は俺の方がでかいはずなのに、どういうわけか彼女の歩みは静かで速い。
 結局和音さんには教室まで追いつくことができなくて、俺はその言葉に肯定することも否定することもできなかった。
 けれど彼女は彼女で、俺からの返答など求めていないのだろう。彼女はただ彼女が見て思ったことを、ぽつりと漏らしただけだ。
 それに対し、大した洞察力だなと感じる俺は――どちらかというと彼女の言葉を肯定していた。

 ファッションの好みは似ていても、賑やかなオワタと人付き合いが苦手な俺では、中身はあんまし似てない。逆に、本当はオワタは繊細で、俺は案外図太いということもお互い知っている。
 何だかんだそれがちょうどいいのだ、俺たちは。似たようで、ちぐはぐで、妙にしっくりくる。
 それは多分、ジグソーパズルの隣人のような関係性。


FIN.
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